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働き方改革 その3

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平成26年に日本生産性本部が発表した資料によると、OECDデータに基づく2015年の日本の時間当たり労働生産性は、42.1ドル(4,439円)だった。これは米国の6割強の水準で、順位はOECD加盟35ヵ国中20位である。1人当たり労働生産性は、74,315ドル(783万円)でありOECD加盟35ヵ国中22位となっている。

GDP基準改定後のデータも公表され、この推計では2015年の時間当たり労働生産性は44.8ドル(4,718円 / 購買力平価(PPP)換算)となっており、従来基準から6.3%上昇しており、順位もOECD加盟35ヵ国中19位となっている。従来基準による順位から1つ上昇している。1人当たり労働生産性は78,997ドル(832万円)。順位は、OECD加盟35ヵ国中22位となっている。

この基準で比較した場合、OECD加盟35ヵ国の中では低いと言わざるを得ない。このデータをもとに、メディアではダラダラと残業している様子や、会議が長いことなどと一緒に紹介され、だから「労働生産性を上げるべき」という論が展開される。

そもそも「労働生産性」とは何なのだろうか?  この意味を捉えなくては、問題提起も、議論は成立しないはずだ。

「効率」のことを考えているのではないだろうか。それ自体が、大きな間違いであり、誤解である。

この国際比較で使われる「労働生産性」という指標は労働者1人当たりが生み出す成果、あるいは労働者が1時間で生み出す成果を指標化したものである。アウトプット(付加価値額または生産量など)をインプット(労働投入量:労働者数または労働者数×労働時間)で割ったものである。

国際比較の際には購買力平価(PPP:物価水準などを考慮した各国通貨の 実質的な購買力を交換レ-トで表したもの)によって通過換算をして行う。労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したものであり、労働者の能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善などによって向上する。労働生産性の向上は、経済成長や経済的な豊かさをもたらす要因とみなされている。

ただ、お気づきの通り、産業構造や人口などが影響するので、一企業や一個人の努力「だけ」では向上が期待できないものでもある。さらに言うならば、一国家の努力すらも簡単に反映されるわけではない。労働者のパフォーマンスだけでは向上しないのである。

生み出した付加価値や、それに対する需要も関係する。だから「ダラダラ残業」や「長い会議」を是正することで向上する可能性はあるにはあるが、それ「だけ」では劇的に向上しない。

2015年のOECD加盟諸国の時間当たり労働生産性のランキングを見てみよう。単位は購買力平価換算USドルだ。

1位がルクセンブルク(95.0)、2位がアイルランド(87.3)、3位がノルウェー(81.3)、4位がベルギー(70.2)、5位が米国(68.3)、6位がフランス(65.6)、7位がドイツ(65.5)、8位がオランダ(65.4)、9位がデンマーク(65.0)、10位がスイス(64.2)だ。日本は20位(42.1)だ。OECD平均は50.0となっている。

このランキングを見てお気づきの方も多いことだろう。ここで言う労働生産性が高い国とは、金融センターか資源を持っている国、あるいは都市国家など、小規模の国である。なお、1980年から不動の1位だ。

ルクセンブルクはユーロ圏を代表する金融センターであり、重工業も栄えている。なにせ、人口は60万人程度の小国だ。日本でいうと、千葉県船橋市、鹿児島県鹿児島市、東京都八王子市程度の人口の国家だと思って頂きたい。

主要先進7ヵ国(米国、フランス、ドイツ、英国、イタリア、カナダ、日本)で比較しても、統計で遡ることのできる1970年以降、日本は最下位の状況が続いている。石油ショックの前も、バブルの時代も最下位であり続けたのだ。

なお、製造業とサービス業でも生産性の考え方は違う。日本ではサービス業がGDPベースでも、就業者数ベースでも全体の7~8割をしめる。サービス業の生産性アップが課題だとされるが、計測上の問題を抱えている。

サービス業は、24時間営業などが過剰なサービスだと指摘されているが、それを換金化しているわけではない。海外のようにチップをもらうわけでもない。

何より誤解してはならないのは、個々人の努力「だけ」で何かできるわけでもないということだ。結局は、産業構造や、人口、ITなどへの設備投資が必要である。

日本の労働生産性が国際比較して低いということ自体は間違いではないし、国家、企業、労働者の努力、創意工夫によって改善できる部分があるのもまた事実ではある。ただ、そもそも指標の問題、限界を抱えていることを確認しておきたい。

この指標だけを追いかけるのではなく、他の様々な指標とともに、さらには定量的な計測だけでなく、定性的にも捉えなくてはならない。なにせ、儲かる産業を創らなくてはならない。労働者の努力だけでは数値は改善しないのだ。

「日本は労働生産性が低い」「だから、これをアップさせなくてはならない」というのは、間違ってはいないが、戦略的ミスリードである。

何より、労働者が怠けているかのような印象操作は許せない。